Açıklama
「わたしもいっしょについて行きます。どこの病院でもそうですから。」
おっかさんの野ねずみは きちがいのようになってセロに飛びつきました。
「おまえさんもはいるかね。」
セロ弾きは おっかさんの野ねずみをセロの あなからくぐしてやろうとしましたが
顔が半分しかはいりませんでした。野ねずみは ばたばたしながら 中のこどもに叫びました。
「おまえそこはいいかい。落ちるときいつも教えるように 足をそろえてうまく落ちたかい。」
「いい。うまく落ちた。」
こどものねずみは まるで蚊のような小さな声で セロの底で返事しました。
「大丈夫さ。だから泣き声出すなというんだ。」
ゴーシュは おっかさんのねずみを下におろして それから弓をとって
何とかラプソディとかいうものを ごうごうがあがあ弾きました。
すると おっかさんのねずみは いかにも心配そうに その音の工合をきいていましたが
とうとう こらえ切れなくなったふうで
「もう沢山です。どうか出してやってください。」
といいました。
「なあんだ、これでいいのか。」
ゴーシュはセロをまげて あなのところに手をあてて 待っていましたら
間もなく こどものねずみが出てきました。
ゴーシュは、だまってそれをおろしてやりました。見るとすっかり目をつぶって
ぶるぶるぶるぶる ふるえていました。
「どうだったの。いいかい。気分は。」
こどものねずみは すこしもへんじもしないで まだしばらく眼をつぶったまま
ぶるぶるぶるぶる ふるえていましたが、にわかに起きあがって走りだした。
「ああ よくなったんだ。ありがとうございます。ありがとうございます。」
おっかさんのねずみも いっしょに走っていましたが、まもなくゴーシュの前に来て
しきりにおじぎをしながら
「ありがとうございます ありがとうございます」
と十ばかりいいました。
ゴーシュは 何がな かあいそうになって
「おい、おまえたちはパンはたべるのか。」
とききました。
すると野ねずみは びっくりしたように きょろきょろあたりを見まわしてから
「いえ、もうおパンというものは小麦の粉を こねたり むしたりして こしらえたもので
ふくふく膨んでいて おいしいものなそうでございますが、そうでなくても
私どもは おうちの戸棚へなど まいったこともございませんし、
ましてこれ位お世話になりながら どうしてそれを運びになんどまいれましょう。」
といいました。
「いや、そのことではないんだ。ただ たべるのかときいたんだ。
では たべるんだな。ちょっと待てよ。その腹の悪いこどもへやるからな。」
ゴーシュはセロを床へ置いて 戸棚からパンを一つまみむしって 野ねずみの前へ置きました。
野ねずみは もうまるで ばかのようになって泣いたり笑ったり おじぎをしたりしてから
大じそうに それをくわえて こどもをさきに立てて外へ出て行きました。
「あああ。ねずみと話するのもなかなかつかれるぞ。」
ゴーシュは ねどこへ どっかり倒れて すぐ ぐうぐうねむってしまいました。
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