説明
カンパネラ少年は、学校が終わると、まっすぐにサンセット通りの科学塾にむかいます。
『魔法ごっこ』をして あそんでいる ともだちを よこ目に、「魔法なんてウソっぱちだ」と、この調子。
勉強が大好きなカンパネラ少年が信じているのは、目に見えるものだけでした。
「ごはんよ。おりてきなさい、カンパネラ」
「ちょっとまって、母さん。となりの星にハシゴが とどきそうなんだ」
カンパネラ少年は、星空で おこなわれている赤いハシゴの工事に夢中です。
科学塾から帰ってきては、ばんごはんも そっちのけで、望遠鏡をのぞいてばかり。
ある日のこと。
その日は、遠くの『えんとつ町』から あがったけむりの量が多くて、星空をうまく のぞくことが できませんでした。しかたがないので、カンパネラ少年は望遠鏡の むきを変えることにしました。
そのときです。
とめていたネジがゆるみ、望遠鏡のさきが くるりと下を むきました。
空中帝国の足もと5000メートルには、うっそうと ひろがる『森』があります。
「そうえいば、『森』は どうなっているんだろう?」
カンパネラ少年は、そのまま望遠鏡を のぞきこみました。
なん千年も昔、人間は海から生まれ、あの『森』で暮らした時期があったといいます。これは、空中帝国に住む現代の人間には かんがえられないことでした。『森』は悪性の細菌だらけで、とても人が住める環境ではないからです。年に数回、防護スーツに身をつつんだ帝国の調査団が、『森』へおりているという うわさもありますが、だれひとりとして、そのすがたを見た人はいません。
「『森』には、いったいなにがあるんだろう。」
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