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''Rashomon'' #1
Written by Ryunosuke Akutagawa 1915
『羅生門』(らしょうもん) 芥川龍之介・著
第一話
ある日の暮方の事である。
一人の下人が、羅生門の下で 雨やみを待っていた。
広い門の下には、この男のほかに誰もいない。
ただ、ところどころ丹塗りの 剥げた、大きな円柱に、
きりぎりすが 一匹とまっている。
羅生門が、朱雀大路にある以上は、この男のほかにも、
雨やみをする市女笠や 揉烏帽子が、もう二,三人は
ありそうなものである。
それが、この男のほかには誰もいない。
なぜかというと、この二,三年、京都には、
地震とか 辻風とか 火事とか 饑饉とかいう災いが
つづいて起こった。
そこで洛中の さびれ方は 一通りではない。
*漢字
ある日 あるひ
暮方 くれがた
事 こと
一人 ひとり
下人 げにん
羅生門 らしょうもん
下 した
雨やみ あまやみ
待っていた まっていた
広い ひろい
門 もん
誰 だれ
丹塗り にぬり
剥げた はげた
大きな おおきな
円柱 まるばしら
一匹 いっぴき
朱雀大路 すざくおおじ
以上 いじょう
この男 このおとこ
市女笠 いちめがさ
揉烏帽子 もみえぼし
二、三人 に さんにん
京都 きょうと
地震 じしん
辻風 つじかぜ
火事 かじ
飢饉 ききん
災い わざわい
起こった おこった
洛中 らちゅう
さびれ方 さびれかた
一通り ひととおり
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