韓国語を学ぶ日本人にとって、韓国語が難しいと感じるポイントのひとつが発音です。
中でも、激音や濃音の発音については戸惑う方も多いと思います。激音や濃音の発音について、発音変化のルールを含めてしっかり理解しておくと、発音をマスターできるだけでなく韓国語学習自体を進めやすくなるでしょう。
この記事では、韓国語学習歴が10年以上で日韓翻訳業務経験を持つ筆者が、韓国語の発音が難しいと感じられるのはどの点なのか、韓国語の母音・子音の発音及び、発音変化のルールについて解説します。
韓国語を学び始めた方はぜひ参考にしてください。
※記事中のカタカナ表記については、あくまでハングル文字の読み方の目安とお考えください。
韓国語の激音とは
韓国語の激音とは、子音の中で「有気音(強く息を吐き出すように発音する音)」に属するものです。
激音に含まれる子音「ㅊ・ㅋ・ㅌ・ㅍ」は、平音(無気音)「ㅈ・ㄱ・ㄷ・ㅂ」がそれぞれ有気音化したものです。
激音は4つある
激音は「ㅊ・ㅋ・ㅌ・ㅍ」の4つです。
まず、発音について簡単に説明します。
ㅊ | 「チャ・チュ・チョ」を息を強く吐き出すように発音します。 |
ㅋ | 日本語のカ行の音を息を強く吐き出すような感じで発音します。 |
ㅌ | 日本語のタ行の音を息を強く吐き出すような感じで発音します。 |
ㅍ | 日本語のパ行の音を息を強く吐き出すような感じで発音します。 |
激音の発音のコツ
激音は、「息を強く吐き出すような感じ」で発音します。
「息を強く吐き出すような感じ」というとイメージしづらいかもしれませんが、日本の人名や地名をハングルで表記するとき、日本語にないはずの激音で表記される場合があります。
例えば、「中野」は日本語の音どおりなら「나가노」と表記されるはずです。しかし、駅やバスなどの案内表示を見ると「나카노」となっています。「横浜」「神奈川」なども、それぞれ「요코하마」 「 카나가와」と表記されています。
確かに、日本人の私たちも、これらの地名を発音するときは「か」の音を無意識に少し強い音で発音しています。特に「神奈川」の場合、「かながわ」の「か」は強い音、「が」は鼻母音または弱めのgaの音で発音していることに気づくと思います。
実際の激音はもう少し強い音ですが、日本人にとってわかりやすい例は、「神奈川」の「か」の音をはっきり発音する感覚です。
韓国語の濃音とは
韓国語の濃音とは、「ㄱ・ㄷ・ㅂ・ㅅ・ㅈ」が2つ重なった子音「ㄲ・ㄸ・ㅃ・ㅆ・ㅉ」をいいます。
濃音は別名「合成子音」ともいいます。
濃音は5つある
濃音は「ㄲ「ㄲ・ㄸ・ㅃ・ㅆ・ㅉ」・ㄸ・ㅃ・ㅆ・ㅉ」の5つがあります。
まず、発音のしかたについて簡単に説明します。
ㄲ | 促音(つまる音)を伴った「ッカ・ッキ・ック」のように、息を出さずに発音します。 |
ㄸ | 同様に「ッタ・ッチ・ットゥ」のように発音します。 |
ㅃ | 「ッパ・ッピ・ップ」のように発音します。 |
ㅆ | 「ッサ・ッシ・ッス」のように発音します。 |
ㅉ | 「ッチャ・ッチ・ッチュ」のように発音します。 |
濃音の発音のコツ
濃音も日本語にはない音になっていますが、日本語に「学校」「一致」など、2音節目が詰まる音になる単語がたくさんあります。
そのため、「がっこう」の「っこ」、「いっち」の「っち」のように発音すればよい、という意識づけが可能です。
ただ、日本語の単語には韓国語の濃音で始まる単語のように、1音節目(最初の音)が「っこ」のようになるものがありません。しかし、私たちも会話では「まったく!」を「ったく!」のように言っていることがあります。この場合の「ったく」は、「たくさん」の「たく」などとは明らかに音の出し方が違います。
このように、1音節目が濃音になる単語の発音は、「ったく!」の「った」を少し速く発音する感じ、と説明できると思います。
韓国語の発音変化によって激音化するパターン
激音化とは、平音「ㄱ・ ㅂ・ ㄷ・ ㅈ」に 「ㅎ」が続いたとき、ㄱ・ ㅂ・ ㄷ・ ㅈが激音「ㅋ・ㅍ・ㅌ ・ㅊ」に変わる発音変化です。
次に解説する濃音化に比べると、シンプルで分かりやすいと思います。
激音化するパターンは以下の2つあります。
- パッチムㄱ・ㅂ・ㄷ・ㅈ+子音ㅎ
- パッチムㅎ+子音・ㄱ・ㅂ・ㄷ・ㅈ
パターン①:パッチムㄱ・ㅂ・ㄷ・ㅈ+子音ㅎ
パターンの一つ目は、パッチム「ㄱ・ ㅂ・ ㄷ・ ㅈ」の後に子音ㅎが続くときに激音化が起こるものです。
具体的なパターンを表にまとめました。
ㄱ + ㅎ = ㅋ |
ㅂ + ㅎ = ㅍ |
ㄷ + ㅎ = ㅌ |
ㅈ + ㅎ = ㅊ |
例)
【考える・思う】
생각하다(センガカダ)
文字をそのまま発音すると「センガクハダ」となります。
しかし、2文字目각のパッチム「ㄱ」に3文字目の子音「ㅎ」が続くため、「ㄱ」と「ㅎ」が合わさって激音化が起こり、発音が激音「ㅋ」に変わります。
その結果、実際の発音は생가카다(センガカダ)となります。
例)
【入学する】
입학하다 (イパカダ)
文字をそのまま発音すると「イパクハダ」となります。
しかし、最初の文字입のパッチム「ㅂ」に3文字目の「학」の子音ㅎが続いているため、「ㅂ」と「ㅎ」が合わさって激音化が起こり、発音が激音「ㅍ」に変わります。
さらに、一つ目の例と同様に、2文字目학の「ㄱ」と3文字目の하の子音「ㅎ」が合わさって激音化が起こり、発音が激音「ㅋ」に変わります。
その結果、実際の発音は이파카다(イパカダ)となります。
パターン②:パッチムㅎ+子音・ㄱ・ㅂ・ㄷ・ㅈ
パターンの二つ目は先ほどとは逆で、パッチム「ㅎ」「ㄱ・ㅂ・ㄱ・ㅈ」が続くときに激音化します。
具体的なパターンは下表のとおりです。
ㅎ + ㄱ = ㅋ |
ㅎ + ㅂ = ㅍ |
ㅎ + ㄷ = ㅌ |
ㅎ + ㅈ = ㅊ |
例)
【好きだ・良い】
좋다(チョタ)
文字をそのまま発音すると「チョッダ」となります。
しかし、줗のパッチム「ㅎ」に子音「ㄷ」が続いているため、「ㅎ」と「ㄷ」が合わさって激音化が起こり、発音が激音「ㅌ」に変わります。
従って、実際の発音は조타(チョタ)となります。
例)
【大丈夫だ】
괜찮다(クェンチャンタ)
2文字目찮のパッチム「ㅎ」に3文字目の子音「ㄷ」が続いているため、「ㅎ」と「ㄷ 」が合わさって激音化が起こり、発音が激音「타」に変わります。
その結果、実際の発音は괜찬타(クェンチャンタ[タが激音])となります。
【関連記事】韓国語のパッチムとは?発音のコツや覚え方をわかりやすく解説
韓国語の発音変化によって濃音化するパターン
濃音化とは、詰まる音のパッチムㄱ[ k ]・ㄷ[ t ]・ㅂ[ p ]※の後にㄱ・ㄷ・ㅂ・ㅅ・ㅈで始まる音節が続いたとき、 濃音「ㄲ・ㄸ・ㅃ・ㅆ・ㅉ」の音で発音されるというルールです。
※「詰まる音のパッチム[ k ]・ㄷ[ t ]・ㅂ[ p ]」とは、「ㄱ[ k ]・ㄷ[ t ]・ㅂ[ p ]及び、ㄱ・ㄷ・ㅂと同じ発音をするパッチム」を意味します。[ k ]・ㄷ[ t ]・ㅂ[ p ]と同じ発音をするのは以下のパッチムです。
ㄱ[ k ] | ㄱ ㅋ ㄲ ㄳ ㄺ |
ㄷ[ t ] | ㄷ ㅌ ㅅ ㅆ ㅈ ㅊ ㅎ |
ㅂ[ p ] | ㅂ ㅍ ㅄ ㄿ |
濃音化するパターンとしては、基本パターンと6つの例外パターンがあります。
- 基本パターン:パッチムㄱ・ㄷ・ㅂの後の子音ㄱ・ㄷ・ㅂ・ㅅ・ㅈが濃音になる
- 例外パターン:①漢字語のㄹパッチム+ㄷ・ㅅ・ㅈ
②語尾ㄹ+ㄱ・ㄷ・ㅂ・ㅅ・ㅈ
③語幹のパッチムㄴ・ㅁ+ㄱ・ㄷ・ㅅ・ㅈ
④合成語のパッチムㄴ・ㄹ・ ㅁ ・ㅇ+ㄱ・ㄷ・ㅂ・ㅅ ・ㅈ
⑤接尾辞(的・性・点など)が付く場合
⑥「~のもの」という意味の것・거
基本パターン:パッチムㄱ・ㄷ・ㅂの後の子音ㄱ・ㄷ・ㅂ・ㅅ・ㅈが濃音になる
濃音化の基本パターンは、パッチムㄱ・ㄷ・ㅂの後の子音ㄱ・ㄷ・ㅂ ・ㅅ・ㅈが濃音化して、実際の発音がㄲ・ㄸ・ㅃ・ㅆ・ㅉとなることです。
例)
【食堂】
식당
[ k ]の音のパッチムㄱの後にㄷで始まる音節が続いているので、ㄷが濃音化してㄸの音になり、実際の発音は식땅 (シクッタン)となります。
例)
【学校】
학교
[ k ]の音のパッチムㄱの後にㄱで始まる音節が続いているので、ㄱが濃音化してㄲの音になり、実際の発音は (ハッキョ)となります。
例外パターン①:漢字語のㄹパッチム+ㄷ・ㅅ・ㅈ
激音化には例外はありませんが、濃音化には例外がたくさんあります。
しかし、一度に覚える必要はありません。学習を進める中で濃音化する単語を見つけたときに、たとえばこのページを見直して確認する方法で記憶を定着させてください。
例外パターンの1つ目は、ㄹパッチムが付いた漢字語で、ㄹパッチムの後に子音ㄷ・ㅅ・ㅈが続く場合にㄷ・ㅅ・ㅈが濃音化することです。
この場合、実際の発音はㄸ・ㅆ・ㅉとなります。
例)
【発達】
발달
「発達」の意味の漢字語발달では、ㄹパッチムの付いた文字발に続く文字달の子音ㄷが濃音化します。
実際の発音は발딸(パルッタル)になります。
例外パターン②:語尾ㄹ+ㄱ・ㄷ・ㅂ・ㅅ・ㅈ
ㄹパッチムのついた語尾の後に、子音ㄱ・ㄷ・ㅂ・ㅅ・ㅈで始まる単語が続く場合にも濃音化が起こります。
例)
【~します】
할 거예요
「~する」の意味の動詞하다(ハダ)の未来連体形語尾할のㄹパッチムに続く、単語の最初の文字거の子音ㄱが濃音化します。
実際の発音は할꺼예요(ハルッコエヨ)になります。
例外パターン③:語幹のパッチムㄴ・ㅁ+ㄱ・ㄷ・ㅅ・ㅈ
用言(動詞や形容詞など、活用変化する単語)の語幹のパッチムㄴ・ㅁに続く(語尾の最初の文字の)子音がㄱ・ㄷ・ㅅ・ㅈである場合にも、濃音化が起こります。
例)
【黒い】
검다
「黒い」の意味の形容詞검다(コムタ)の語幹검のパッチムㅁに続く、語尾다の子音ㄷが濃音化します。
実際の発音は검따(コムッタ)になります。
例外パターン④:合成語のパッチムㄴ・ㄹ・ ㅁ ・ㅇ+ㄱ・ㄷ・ㅂ・ㅅ ・ㅈ
合成語(名詞1+名詞2)の名詞1のパッチムㄴ・ㄹ・ㅁ・ㅇに、名詞2の子音がㄱ・ㄷ・ㅂ・ㅅ・ㅈである場合に、名詞2の子音ㄱ・ㄷ・ㅂ・ㅅ・ㅈの濃音化が起こります。
例)
【足の裏】
발바닥
「(足首より下の)足」の意味の名詞1발(パル)に続く、「裏」の意味の名詞2바닥(パタク)の子音바が濃音化します。
実際の発音は발빠닥(パルッパタク)になります。
例外パターン⑤:接尾辞(的・性・点など)が付く場合
韓国語にも、日本語と同じように「的・性・点」などの接尾辞がついた漢字語名詞があります。この場合、接尾辞に濃音化が起こります。
「的・性・点」の意味の接尾辞については、実際の発音はそれぞれ以下のようになります。
※적と점の片仮名表記「ヂ」は、接尾辞として有声音で発音する場合です。
- 적(ヂョク:~的)→쩍(ッヂョク)
- 성(ソン:~性) →썽 (ッソン)
- 점(ヂョム:~点)→쩜 (ッヂョム)
例)
【安全性】
안정성
「~性」の意味の성の子音ㅅが濃音化します。
実際の発音は안정썽(アンヂョンッソン)になります。
例外パターン⑥:「~のもの」という意味の것・거
名詞または代名詞に接続する「~のもの」という意味の것(コット)・거(コ)にも濃音化が起こります。
例)
【私の物】
제 것
「私の」の意味の제(チェ)に続く 것(コッ)が濃音化します。
実際の発音は제 껒(チェッコッ)となります。
【関連記事】韓国語の発音は難しい?母音・子音・発音変化のルールや上達のコツを解説!
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まとめ:韓国語の激音・濃音は単語を発音してマスターしよう
この記事では、韓国語の激音・濃音の発音のコツや、発音変化ルールの中の激音化・濃音化などについて解説しました。
激音・濃音の発音について苦手意識を持っている方、激音化・濃音化のルールを覚えきれなかった方にとって理解の助けになれば幸いです。
激音・濃音の発音や、激音化・濃音化のルールについては、日々のリスニング学習や音読練習の際に入門書の発音解説部分や解説記事などを頻繁に見返してください。
音声を聴き、意識しながら発音することで少しずつマスターしていきましょう。
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