イタリア語は、日本語同様に母音がはっきりしているため発音しやすい言語です。
会話をする上で最も重要な挨拶のひとつ「ありがとう」は、イタリア語でどのように表現するのでしょうか。
「Grazie(グラッツィエ)」と発音するイタリア語の「ありがとう」は、ご存じの方も多いかもしれません。イタリア語においてももちろん、日本語や英語と同じようにさまざまなニュアンスの「ありがとう」が存在します。
本記事では10年以上イタリアに住んでおり、翻訳の実績も豊富な筆者がイタリア語の「ありがとう」について、さまざまなシチュエーションとともに説明します。
イタリア語の「ありがとう」|基本
筆者撮影
あらゆる言語に共通することですが、「ありがとう」にもニュアンスや状況によって言い方が変化します。
まずは、基本的な「ありがとう」についてみていきましょう。
基本①:ありがとう
イタリア語の基本的な「ありがとう」はGrazie(グラッツィエ)と言います。「Grazie」は間投詞であるため、主語も活用もありません。
この言葉を使うだけで、シンプルに「ありがとう」の意を伝えられます。ちなみに間投詞とは話し手の喜び、悲しみ、驚きなどの感情を伝える品詞のことです。
【参考】在里寛司 ・池田 廉 ・郡 史郎 ・西村暢夫 ・米山嘉晟編 (1999)伊和中辞典(第2版)小学館
基本②:本当にありがとう
感謝の気持ちをさらに深く伝える「本当にありがとう」を表現をするには、形容詞をつけることで表現の幅を広げられます。
イタリア語の「本当にありがとう」の言い方はいくつか存在するので、使い分けを事前に確認しておきましょう!
- Tante grazie.(タンテ・グラッツィエ)
- Mille grazie.(ミッレ・グラッツィエ)
- Grazie di cuore.(グラッツィエ・ディ・クオーレ)
- Grazie infinite.(グラッツィエ・インフィニーテ)
- Grazie tante.(グラッツィエ・タンテ)
- Grazie mille.(グラッツィエ・ミッレ)
実際に知人同士で使用する場合は「Grazie tante」「Grazie mille」などのフレーズをよく耳にします。
いずれも「多くの」「千の」という意味を「ありがとう」につけ加えて、深い謝意を伝えているのです。
基本③:〜してくれてありがとう
行為に対する謝意はどのように伝えるのでしょうか。
「ありがとう」を意味する「Grazie」はそのままですが、その後に前置詞である「di」や「per」がつきます。
例を見てみましょう。
- Grazie dell’aiuto.(グラッツィエ・デラユート)
- Grazie per l’aiuto.(グラッツィエ・ペル・ラユート)
前置詞と定冠詞の使い方は少し複雑ですが、どちらも「助けてくれてありがとう」という意味です。
「di」と「per」の使い分けは特に定義されていません。イタリアの文法書では、いずれの使い方も正しいと明記されています。
【参考】Zanichelli editore S.p.A.「Grazie di o grazie per?」
グラッツェの発音のコツ
筆者撮影
日本語では「グラッツェ」と表記する「Grazie」、実際にはどのように発音するのでしょうか。
「グラ」の部分で上昇する感覚で「ラ」を強く発音します。「ラ」に続く「ツェ」の間に、小さな「ツ」と長音の「ー」を入れる感じで発音すると、よりネイティブに近くなります。
「ツェ」は「チェ」とも「ゼ」とも異なります。軽やかに「ツェ」と発音してみてくださいね!
イタリア語の「ありがとう」|過去形
筆者撮影
過去の行為に感謝する場合はどうでしょうか。
過去形の場合は、助動詞のaverおよびessereに過去分詞をつなげることになります。
例を挙げてみましょう。
【連絡をくれてありがとう】
Grazie di avermi contattato.(グラッツィエ・ディ・アヴェルミ・コンタッタート)
【(複数の人数に対して)来てくれてありがとう】
Grazie di essere venuti .(グラーツィエ・ディ・エッセレ・ヴェヌーティ)
それぞれの動詞の原形は「contattare(連絡する)」「ヴェニーレ(来る)」です。イタリア語の動詞の活用の中でも、過去分詞は基本として覚える必要があります。
動詞の過去形を使う「ありがとう」は、過去分詞を使用することがほとんどなのです。
イタリア語の文法に精通していない場合は、次のようなフレーズが便利なのでぜひ試してみてくださいね。
Grazie di tutto.(グラーツィエ・ディ・トゥット)
「いろいろとありがとう」といったニュアンスを込めたGrazie di tutto.は、動詞を変化させることなく使用できます。
イタリア語の「ありがとう」|丁寧な言い方
フランクなイメージのあるイタリア人ですが、目上の人や初めての人と話す場合には丁寧語を使います。「ありがとう」を丁寧に表現するときは、前述した「Grazie」は使いません。
いくつかの例を見てみましょう。
丁寧①:誠にありがとうございます
「ありがとうございます」と丁寧に言う場合には「Grazie」という言葉の使用頻度は低くなります。
「Ringraziare(感謝する)」という動詞を使うことで、より丁寧な言い方となるためです。
「誠にありがとうございます」というイタリア語は、以下のフレーズになります。
相手が1人の場合
La ringrazio molto.(ラ・リングラーツィオ・モルト)
相手が複数の場合
Vi ringrazio tanto.(ヴィ・リングラーツィオ・タント)
文の冒頭にくる目的語代名詞は、相手の人数や親しさによって変化します。
「誠に」を表す「molto」や「tanto」は、ほとんど同じ意味ですので、特に使い分ける必要はありません。
「Ringrazio」は動詞「Ringraziare」の変化形で、1人称単数「(私は)感謝します」の意です。
丁寧②:心より御礼申し上げます
さらに感情を込めて、「心よりお礼申し上げます」の場合はどうでしょうか。「心」を意味するイタリア語「cuore(クオーレ)」を使って表現します。
La ringrazio di tutto cuore.(ラ・リングラーツィオ・ディ・トゥット・クオーレ)
「心のすべてをもって感謝します」というニュアンスになり、とてもエレガントです!
丁寧③:どうもありがとうございます
上記の丁寧な「ありがとう」よりもう少しカジュアルに「どうもありがとうございます」と伝えたいときは、以下のように伝えてみましょう。
Ti ringrazio tanto(ティ・リングラーツィオ・タント)
冒頭の「誰に」を意味する部分、間接目的語を、目上の人に対する「La(あなたに)」ではなく、より親しさのある「Ti(君に)」とすることで、ほどよいバランスの「どうもありがとうございます」を表現できます。
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イタリア語の「ありがとう」への答え方
「ありがとう」はこちらから伝えるだけではなく、相手から伝えられることもある言葉です。
「ありがとう」と言われたら、どう答えるべきなのでしょうか。
こちらもいくつかのシチュエーションを想定して解説します。
答え方①:どういたしまして
「ありがとう」と言われたら「どういたしまして」という意味の「Prego(プレーゴ)」と答えるのが一般的です。
イタリア語の「Prego」はさまざまな意味があり「Prego?」と尻上がりに発音すると「なんとおっしゃいましたか?」という意味になってしまいます。
「どういたしまして」の「Prego」は平易に発音するとよいでしょう。
【参考】在里寛司 ・池田 廉 ・郡 史郎 ・西村暢夫 ・米山嘉晟編 (1999)伊和中辞典(第2版)小学館
答え方②:こちらこそありがとう
「ありがとう」と言われて「こちらこそありがとう」と答えたい場合に使う言葉が「Altrettanto(アルトレタント)」です。
「Altrettanto」は本来「同じ量のものを」「同じ分だけ」という意味があります。「こちらも同じくらい感謝しております」という意味で使われます。
【参考】在里寛司 ・池田 廉 ・郡 史郎 ・西村暢夫 ・米山嘉晟編 (1999)伊和中辞典(第2版)小学館
答え方③:大したことではありません
お礼を言われて「大したことではありませんよ」「お気になさらないでください」という感情を伝えたい場合には「Prego」のあとに「Non c’e` di che(ノン・チェ・ディ・ケ)」と付け加えると丁寧な返しになるので覚えておきましょう。
目上の方には「Prego, non c’e` di che」と答えると感じがよいですが、友人同士でごく気軽に会話する場合には「Di che!(ディ・ケ)」と省略することもあります。
まとめ
イタリア語のありがとうは、日本と同じく色々な意味や使い方が存在します。
- 「Grazie」に「molto」や「tanto」をつけ加えることで謝意を強める。
- 過去形の「ありがとう」は動詞の活用を会得する必要があるが、「Grazie di tutto」というシンプルなフレーズを用いることもできる。
- 目上の人に対しては「Ringraziare(感謝する)」という動詞を使用する。
- 感謝された場合の応え方も、「Prego」だけのシンプルなものから気持ちを込めたものまでいくつかのいい方がある。
お礼を伝える相手やシチュエーションに合わせて、最適なありがとうを選んでくださいね。
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