「冠詞」は、フランス語を長く勉強している人でも使い分けに悩むことが多々あります。

フランス語の冠詞は、英語に比べて種類も多く、つく名詞や伝えたいニュアンスによって使い分ける必要があるので、かなり複雑と言えます。

早いうちに「冠詞」の種類や使い分け方を理解しておくことは、フランス語の学習をスムーズに進める上でとても大切です。

この記事では、フランスに在住及び留学経験があり、フランス語学習歴10年以上の私が、フランス語の冠詞の種類や使い分けなどを詳しく解説します。

フランス語の冠詞一覧

フランス語には、以下の3種類の冠詞があります。

  1. 定冠詞
  2. 不定冠詞
  3. 部分冠詞

それぞれの冠詞に男性単数・女性単数・男女複数の3パターンがあり、計8個(※)の冠詞があります。

※部分冠詞は男女複数がありません

全ての冠詞を一覧にまとめましたので、ぜひ参考にしてください。

男性・単数女性・単数男女・複数
定冠詞le(l’)la(l’)les
不定冠詞ununedes
部分冠詞du(de l’)de la(de l’)

フランス語の冠詞は3種類を使い分ける

なぜフランス語は3種類も冠詞があるのでしょうか。

それは、冠詞それぞれに異なる意味があり、名詞の前にどの冠詞を置くかによって意味が変化するからです。

英語の冠詞「a / an」と「the」を使い分けるように、フランス語も各冠詞を状況に応じて使い分ける必要があります。

ここからは、各冠詞の意味を説明した上で、どのような場合で使うのかを詳しく解説していきます。

フランス語の冠詞①:定冠詞(le, la, les)

まずは定冠詞です。定冠詞には、以下の3つがあります。

男性・単数女性・単数男女・複数
定冠詞le(l’)la(l’)les

定冠詞(le, la, les)の使い方

フランス語の定冠詞は、英語の「the」に相当する冠詞です。つまり、特定のものを指す場合や、すでに会話や文中で現れた名詞を再び使うときに、該当の名詞の前に置かれます。

つまり、話し手と聞き手との間で「指しているものがどれか」という認識が一致している場合に使う、というのが定冠詞です。

具体的には、以下のような名詞や場合につきます。

  • すでに会話で出てきている名詞
  • 世界に一つだけの名詞
  • もの一般を総称してカテゴリーとして指す場合
  • 状況的に指しているものが共通認識できている場合

まず、「すでに会話に出てきている名詞」の例文を見てみましょう。

例:

【バカンス中に本を一冊読みました。】
J’ai lu un livre pendant les vacances.

【その本がとても面白かったんです】
Le livre est très intéressant.

一文目で出てきた「un livre」は、2文目では「le livre」と表記が変わっています。

次に、「世界に一つだけの名詞」の例文です。

例:

【エッフェル塔】
La tour Eiffel

【日本】
le Japon

エッフェル塔と日本はいずれも世界に一つだけで、話し手と聞き手とで指しているものの認識が一致するため、定冠詞がつきます。

次は「もの一般を総称してカテゴリーとして指す場合」です。

例:

【水は人間にとって大切です】
L’eau est importante pour les humains.

「eau(水)」も「humains(人間)」も、ある特定の水や人間について言っているのではなく、カテゴリー全体の総称として使っています。そのため、定冠詞「la」と「les」がつくのです。

最後は「状況的に指しているものが共通認識できている場合」です。

例:

【醤油を取ってくれる?】
Tu peux me passer la sauce soja?

この場合、おそらく醤油は聞き手の目の前にあり、話し手と聞き手の間で「どの醤油を指しているか」が明確だと考えられます。そのため、定冠詞「la」をつけているのです。

定冠詞(le, la, les)は名詞の性数で使い分ける

定冠詞には「le」「la」「les」の3種類があり、定冠詞がつく名詞の性と数に合わせて使い分けます。

男性名詞単数には「le」を、女性名詞単数には「la」複数形の場合は男性名詞・女性名詞いずれも「les」がつきます。

男性名詞単数の例:

【本】
Le livre

男性名詞複数の例:

【本】
Les livres

女性名詞単数の例:

【テーブル】
La table

女性名詞複数の例:

【テーブル】
Les tables

ちなみに定冠詞「le」・「la」は、母音または無音のhで始まる男性名詞・女性名詞の前では、「l’」と形が変化するので、綴りや発音には注意しましょう。

名詞が無音のhで始める例:

【ホテル】
L’hôtel

名詞が母音で始まる例:

【学校】
L’école

フランス語の冠詞②:不定冠詞(un, une, des)

次に不定冠詞を解説します。不定冠詞は次の3つです。

男性・単数女性・単数男女・複数
不定冠詞ununedes

不定冠詞(un, une, des)の使い方

不定冠詞は、英語の「a / an」に相当する冠詞です。英語と同じように、数えられる名詞で不特定のものを指す場合に使います。

具体的には、以下のような名詞や場合を指します。

  • 会話中で初めて出てきた名詞
  • 同じものがたくさんあるなかで、そのうちのひとつを指す場合
  • あるカテゴリーの中の不特定などれかを指す場合
  • 聞き手がそのものや人を知らない場合
  • 具体的に限定はせずに、他と区別する場合

それぞれ例文で見てみましょう。

まずは「会話中で初めて出てきた名詞」のパターンです。

例:

【その街にはある一人の男が住んでいました】
Un homme habitait dans cette ville.

会話または文章で初めて出てきた名詞「homme」には、不定冠詞「un」がつきます。

次は「同じものがたくさんあるなかで、そのうちのひとつを指す場合」です。

例:

【クロワッサンを一つください】
Un croissant s’il vous plaît.

たくさんあるクロワッサンの中からどれか一つ(不特定)を注文するため、不定冠詞「un」をつけます。

次に「あるカテゴリーの中の不特定などれかを指す場合」の例文を見てみましょう。

例:

【映画が見たいな】
Je veux regarder un film.

これは、映画というカテゴリーの中にある不特定のどれか一つを見たいという意味なので、不定冠詞「un」をつけます。

次は「聞き手がそのものや人を知らない場合」です。

例:

【昨日、ある店に行ったんだ】
J’ai visité un magasin hier.

話し手にとっては特定の店ですが、聞き手にとっては不特定なので不定冠詞「un」をつけます。

最後は「具体的に限定はせずに、他と区別する場合」の例文です。

例:

【とある火曜日、彼女は旅立ったんだ】
Un mardi, elle est partie.

どの火曜日かは限定していませんが、他の火曜日と区別する意味で不定冠詞「un」をつけています。

不定冠詞(un, une, des)も名詞の性数で使い分ける

定冠詞同様に、不定冠詞も名詞の性と数によって使い分けが必要です。

男性名詞単数の例:

【男性】
Un homme

女性名詞単数の例:

【女の子】
Une fille

男性名詞複数の例:

【ペン】
Des crayons

女性名詞複数の例:

【りんご】
Des pommes

ちなみに、定冠詞や部分冠詞と異なり、不定冠詞は母音または無音のhで始まる男性名詞・女性名詞の前でも形は変わりません。

例:

【子供】
un enfant

【女友達】
une amie

ただし、複数形の名詞の前に形容詞を置く場合、不定冠詞「des」は「de」に変化します。さらに、その形容詞が母音で始まる場合は「de」は「d’」になります。

例:

【本当の話】
de vraies histoires

上記の例文は、名詞「histoires」の前に形容詞「vraies」がついているので、不定冠詞「des」は「de」に変化します。

例:

【他の質問】
d’autres questions

こちらは、形容詞「autres」は母音で始まるため、不定冠詞「de」は「d’」となるのです。

フランス語の冠詞③:部分冠詞(du, de la)

最後に解説するのが、部分冠詞です。部分冠詞は以下の2つあり、複数形は存在しません。

男性形女性形
部分冠詞du(de l’)de la(de l’)

部分冠詞(du, de la)の使い方

部分冠詞は数えられない名詞につく冠詞です。そのため複数形が存在せず、男性名詞か女性名詞かによって「du」と「de la」の2つを使い分けます。

部分冠詞は、以下のような名詞や場合に使います。

  • 液体や気体など、数えられない物質の名詞
  • 全体のうちの一部だけを指す場合
  • 勇気や愛など、目に見えない抽象的な名詞

まずは「液体や気体など、数えられない物質の名詞」の例文を見てみましょう。

例:

【私は水を飲みます】
Je bois de l’eau.

水は1個2個と数えられないため、部分冠詞「de la(de l’)」がつきます。

次は「全体のうちの一部だけを指す場合」です。

例:

【お肉はいりますか?】
Voulez-vous de la viande?

お肉の塊(全体)をまるごと渡すのではなく、そのうちの一部を切り渡すというイメージなので、部分冠詞「de la」を使っています。

3つ目は「勇気や愛など、目に見えない抽象的な名詞」のパターンです。

例:

【君は勇気がある】
Tu as du courage.

勇気は目に見えない抽象名詞のため、部分冠詞「du」がつきます。

上記のパターン以外にも、動詞「faire」や「jouer」を使って楽器やスポーツについて話す時も部分冠詞を使います。この使い方も覚えておきましょう。

例:

【私はサッカーをします】
Je fais du foot.

【私の友達はピアノを演奏できます】
Mon ami joue du piano.

部分冠詞(du, de la)は名詞によって形が変わる

名詞が母音または無音のhで始まる場合、部分冠詞は男性形・女性形いずれも「de l’」と形を変えます。つく名詞をしっかりと確認して、形を変えることを忘れないようにしましょう。

母音で始まる女性名詞の例:

【水】
de l’eau

母音で始まる男性名詞の例:

【お金】
De l’argent

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フランス語の否定文では不定冠詞・部分冠詞が変化する(de)

否定文では、直接目的補語の名詞につく不定冠詞・部分冠詞は全て「de」に形が変化します。

どういうことか、例文で見てみましょう。

例:

【私はリンゴを買いました】
J’ai acheté des pommes.

【私はリンゴを買いませんでした】
Je n’ai pas acheté de pommes.

肯定文では不定冠詞複数形がついた「des pommes」でしたが、否定文では「de pommes」となります。

例:

【水が欲しいです】
Je veux de l’eau.

【水はいりません】
Je ne veux pas d’eau.

肯定文では部分冠詞のついた「de l’eau」でしたが、否定文では部分冠詞「de la」が「de」に変化し「d’eau」となります。

この変化はついつい忘れてしまいがちなので、しっかり覚えておきましょう。

フランス語の冠詞がつかない特殊なパターン

厄介なことに、ある特定の場合・表現には冠詞がつかないことがあります。ここからは、冠詞がつかない代表的なパターンをご紹介します。

パターン①:街 / 曜日 / 月(暦)

フランス語は、町や都市の名前には冠詞をつけません。

例:

【私は東京に住んでいます】
J’habite à Tokyo.

【私はパリが好きです】
J’aime Paris.

また、基本的に曜日にも冠詞はつきません。

例:

【月曜日にスーパーへ行った】
Je suis allé au supermarché lundi.

ただし、曜日に定冠詞・不定冠詞をつける場合もあります。

定冠詞をつける場合は「◯曜日はいつも」という習慣を意味します。また、不定冠詞をつけると、他とは区別した「ある特定の曜日」を意味します。

例:

【毎週月曜日はスーパーへ行きます】
Je vais au supermarché le lundi.

【とある月曜日、私はスーパーへ行きました】
Un lundi, je suis allé au supermarché.

さらに、1月や10月といった暦の月にも冠詞はつきません。

例:

【8月に引っ越しました】
J’ai déménagé en août.

パターン②:en+交通手段

前置詞「en」を使って交通手段を表現する場合は、名詞に冠詞がつきません。

例:

【仕事には車で行っているの?それともバス?】
Tu vas au travail en voiture ou en bus?

【私は電車でヨーロッパ一周します】
Je fais le tour de l’Europe en train.

パターン③:職業

自分や他人の職業を紹介する時には、職業を表す名詞に冠詞はつかないので注意しましょう。

例:

【私はエンジニアです】
Je suis ingénieur.

【彼女はアーティストです】
Elle est artiste.

パターン④:宗教

職業同様、自分または他人の宗教は何かを伝える時にも、宗教を表す名詞に冠詞はつきません。

例:

【私はユダヤ教徒です】
Je suis juif.

パターン⑤:数量を表す表現に続く名詞

ものの量を表す以下のような表現を使う場合は、後ろに続く名詞に冠詞はつけないルールとなっています。

  • beaucoup de
  • plus de
  • trop de
  • peu de

例:

【たくさんの果物を食べた】
J’ai mangé beaucoup de fruits.

【彼にはほとんど希望がありません】
Il a très peu d’espoir.

パターン⑥:前置詞deに続く名詞

前置詞「de」の後ろに名詞を置く場合、不定冠詞の複数形「des」と部分冠詞「du / de la」は省略されます。

例:

【本を読むのに眼鏡が必要だ】
J’ai besoin de lunettes pour lire un livre.

本来であれば「des lunettes」ですが、前置詞「de」の後ろなので、不定冠詞「des」が省略されるのが正しい形となります。

例:

【彼女にはお米が必要です】
Elle a besoin de riz.

普通に考えると、部分冠詞をつけて「de du riz」としたくなりますよね。しかし、前置詞「de」の後ろにあるため、部分冠詞「du」が省略されて「de riz」となるのです。

フランス語の冠詞を身につけるには会話練習がおすすめ

フランス語の「定冠詞」「不定冠詞」「部分冠詞」には、それぞれに意味やニュアンスがあります。

冠詞は使っていくうちに使い分けの感覚が掴めてくるので、積極的に会話練習を重ねていくことが効果的です。

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まとめ:フランス語の冠詞はそれぞれのイメージを理解することが重要

この記事では、フランス語の以下の3つの冠詞について、使う場面・使い分け・例外パターンを紹介しました。

  1. 定冠詞(le/la/les)
  2. 不定冠詞(un/une/des)
  3. 部分冠詞(du/de la)

フランス語の冠詞を使い分けられるようになるには、それぞれの冠詞が持つ意味のイメージをきちんと理解することが大切です。

  • 定冠詞:話し手と聞き手との間で指しているものの認識が一致している場合に使う
  • 不定冠詞:数えられる名詞で不特定のものを指す場合に使う
  • 部分冠詞:数えられない名詞に使う

また、以下のように冠詞がつかない特殊なパターンもあるので注意しましょう。

  • 街 / 曜日 / 月(暦)
  • en+交通手段
  • 職業
  • 宗教
  • 数量を表す表現に続く名詞
  • 前置詞deに続く名詞

冠詞それぞれの意味をしっかりと理解し、繰り返し使って練習してみてください。

冠詞の使い分けができるようになると、相手にも自分の意図がしっかりと伝わり、フランス語を話すのがより一層楽しくなるでしょう。

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