フランス語の文法を学ぶなかで、その難しさに戸惑ったことがある人も多いのではないでしょうか。
確かに、フランス語には日本語にはない文法ルールが多いため、習得するのが難しい部分があります。一方で、英語に触れる機会のある日本人には、わかりやすいポイントもあるのです。
この記事では、フランスに在住及び留学経験があり、フランス語学習歴10年以上の私が、フランス語の文法が難しいと言われる理由や日本人が学びやすい点を詳しく解説するとともに、文法のオススメ勉強法も合わせて紹介します。
フランス語の学習が思うように進んでいない人は、ぜひ参考にしてください。
フランス語の文法が難しいと言われる5つの理由
フランス語の文法が難しいと言われる理由は多くありますが、その中でもよく言われる5つを説明します。
理由①:男性名詞・女性名詞がある
フランス語の名詞には、男性名詞と女性名詞の2種類があります。
そして、男性名詞にはUnまたはLe、女性名詞にはUneまたはLaと、それぞれで異なる冠詞が付きます。
例:
【太陽(男性名詞)】
Le soleil
【テーブル(女性名詞)】
Une table
日本語には男性名詞・女性名詞の分類はなく、冠詞もつきません。そのため、日本人は名詞に性があることや、性に合わせた冠詞を付けることに慣れていないのです。
その結果、フランス語を難しいと感じるようです。
理由②:動詞の種類・活用パターンが多い
フランス語学習の初心者がつまずくもう1つのポイントが、動詞の種類と活用の多さです。
覚えるべき頻出動詞の数が多い
英語では、1つの動詞と副詞の組み合わせで複数の意味を表現できます(※)。しかし、フランス語にはそのような表現方法がありません。
(※)get on、get off、get upなど
そのため、フランス語の場合は覚える動詞の種類が比較的多いと言われています。
時制の種類が多い
フランス語の時制の多さも、難しいポイントの一つです。
フランス語の時制は直説法だけでも以下の8つがあり、それぞれの時制に合わせて動詞を活用する必要があります。
- 現在
- 複合過去
- 半過去
- 大過去
- 単純過去
- 前過去
- 単純未来
- 前未来
このほかに、条件法に2種類、接続法に4種類の時制があるのです。
動詞の活用パターンが多い
英語の1人称(I)と3人称(He/She)で動詞の語末が変化するように、フランス語も主語に合わせて動詞の語末が6パターンに変化します。
先ほどの時制ごとに活用形が変わるため、単純計算すると、1つの動詞に対して84パターンの活用があることになるのです。
もちろん、すべての時制や活用を日常的に使うわけではありません。
むしろほとんど使わないため、ネイティブですら覚えていないものもあります。それでも、この活用の多さはフランス語初心者には辛いところでしょう。
フランス語の動詞の種類・活用も、難しいと言われる理由の1つです。
理由③:代名詞の種類が多い
フランス語の代名詞はやや複雑で種類が多いため、フランス語初心者には難しく感じるポイントです。
直接目的補語と間接目的補語で形が変わる人称代名詞や、英語にはない中性代名詞(le/y/en)も存在します。
英語よりも多くの代名詞を使い分ける上、英語や日本語の概念では説明が難しいものも多いのです。
とはいえ、フランス語は英語同様に既出の固有名詞を繰り返すことを嫌うため、一度出てきた名詞は代名詞に置き換えるのが普通です。そのため、代名詞の習得は避けて通れません。
フランス語が難しいと言われる理由は、こういったところにもあります。
理由④:語順が複雑で覚えづらい
代名詞の種類に関連した難しいポイントとして「代名詞を使うと目的語の位置が変化する」が挙げられます。この点は、多くのフランス語初心者が頭を抱えるところです。
代名詞の語順について、いくつか実際に例文を見てみましょう。
例:
【私はピエールを見ています】
Je vois(←動詞) Pierre. → Je le vois.(※)
(※)目的語「Pierre」を代名詞「le」に置き換えた場合、代名詞「le」は動詞の前に移動
また、代名詞の位置は時制によって変わることがあります。例えば複合過去では、代名詞は動詞の前ではなく助動詞の前に置きます。
例:
【私はピエールを見ました】
J’ai(←助動詞) vu Pierre. → Je l’ai vu.(※)
(※)目的語「Pierre」を代名詞「le」に置き換えた場合、代名詞「le」は助動詞「avoir(ここではai)」の前に移動
さらに代名詞が2つある場合は、その2つの代名詞の語順もルールで決まっているため、その順序で配置する必要があります。
例:
【私はピエールにプレゼントを渡します】
Je donne le cadeau à Pierre. → Je le lui donne. (※)
(※)間接目的語「à Pierre」を代名詞「lui」に置き換え、直接目的語「le cadeau」を代名詞「le」に置き換えた場合、「le」→「 lui」の順番に置く
このように様々なパターンを覚える必要があるため、代名詞が絡んだ時のフランス語独自の語順変化に苦しむ学習者は多いのです。
理由⑤:馴染みのない語彙が多い
英語は苦手という人でも、英単語の1つや2つは知っているでしょう。例えば「water=水」と理解できる人も多いと思います。
それではフランス語はどうでしょうか。
フランス語の「eau」が水という意味だと知っている人は少ないでしょう。
日本で暮らしていると、英語の単語やフレーズに出会う機会は多く、普段の会話でも自然に使っている場合があります。一方、フランス語の場合、英語に比べて日常生活で出会う機会は圧倒的に少ないのです。
もちろん、日本でも浸透しているフランス語はありますが、決して多くはありません。
また、フランス語は、「ç ・é・â」など、アルファベットに独自のアクセント記号がつくこともあります。これは日本で暮らしているとあまり出会うことがないものです。
フランス語の単語やアルファベットに馴染みが薄いことも、フランス語を難しいと感じる1つの理由と言えるでしょう。
【関連記事】フランス語が難しい理由とは?発音やリスニングなどの各観点から詳しく解説
思ったより簡単?フランス語の文法がわかりやすいと言われる理由
フランス語の文法が難しいと言われる理由は上記のとおりで、確かに、日本人にとってフランス語の学習は簡単ではありません。
しかし、英語に触れる機会が多い日本人だからこそ、フランス語の文法がわかりやすいと思えるポイントもあります。
ここでは、他言語に比べてフランス語の文法がわかりやすいと言える理由を3つ紹介します。
理由①:アルファベットが英語と同じ
フランス語は、英語と同じアルファベット26文字を使う言語です。
つまり、英語のアルファベットを覚えていれば、はじめからアルファベットを覚える必要がありません。
たとえば、韓国語であればハングル、ロシア語はキリル文字など、他言語を学ぶ時にアルファベットから覚える場合も多くあります。この点、フランス語は学習をスタートさせやすいと言えるでしょう。
フランス語の発音は英語と異なる上に、フランス語独自のアクセント記号が付くこともあるので、完全に同じではありません。
しかし、他言語を学ぶ上で最も基礎となるアルファベットを既に知っていることは、大きなアドバンテージでしょう。
理由②:基本の語順が英語と同じ
フランス語の基本の語順は英語と同じです。つまり、主語、動詞、目的語あるいは補語、という語順になります。
既に英語の語順を学んでいる日本人にとって、フランス語の語順も受け入れやすいはずです。この点も、フランス語を学びやすい理由の1つとして挙げられます。
名詞の後ろに形容詞がついたり、代名詞で語順が変わったりするなどのフランス語特有のルールもありますが、それらは学習を進める過程で少しずつ覚えていけば問題ありません。
アルファベットや語順など、基礎文法において英語と似ている部分が多いフランス語には、英語で学んだことを活かせる部分も多いのです。
理由③:英語にもある冠詞が存在
他言語を学ぶときにつまずきがちなのが、冠詞の存在です。
英語では、名詞の前に付く「a」や「the」のことですが、日本語には冠詞がないので、英語を勉強した時に戸惑った人も多いのではないでしょうか。
フランス語にも冠詞があり、基本的な使い方は英語と似ています。英語で既に冠詞を学んでいれば、フランス語の冠詞という存在に戸惑うことはないでしょう。
ただし、英語とは異なり、フランス語には男性名詞・女性名詞があります。そのため、冠詞の種類も多くなり、英語に比べると複雑ではあります。しかし、基本的な考え方は英語と同じなので、理解するのはそれほど難しくないでしょう。
この点も、フランス語はわかりやすいと言われる理由の1つです。
フランス語の文法をマスターするポイントとおすすめ勉強法3選
ここまで、フランス語の難しい点や理解しやすいポイントなどを紹介してきました。
ここからは、フランス語の文法をマスターするためのポイントとオススメの勉強法を3つ紹介します。
ポイント①:名詞の性を覚える|口に出して覚える
フランス語を学ぶ上で欠かせないのが、名詞の性を覚えることです。
これは、基本ながらマスターするのがとても難しいポイントで、ネイティブの人でも「この名詞は男性名詞だっけ?女性名詞だっけ?」と悩むこともあります。
そんな名詞の性を覚えるのにオススメなのが、名詞と冠詞をセットで口に出して覚える方法です。
例えば男性名詞「livre(本)」と女性名詞「table(テーブル)」を覚える時、以下のように冠詞と一緒に覚えるのです。
例:
【本】
le livre
【テーブル】
la table
これは、ネイティブの多くが名詞と冠詞を常にセットで覚えていることを参考にしています。この方法で覚えれば、セットで覚えた冠詞から男性名詞か女性名詞か判断できるので悩む必要がありません。
フランス語を他言語として学ぶ人の多くは「この名詞は男性名詞。だから冠詞はleだ」というように、名詞の性を暗記してから冠詞を考えています。この方法では、名詞の性をすべて暗記しなくては冠詞がわからないため、覚えることが増えてしまいます。
名詞と冠詞はセットで、何度も口に出して覚えましょう。続けるうちに、自然に名詞と冠詞をセットで言えるようになります。
ポイント②:動詞の活用変化を覚える|レベルで分けて学習
動詞の活用変化を覚えることも、フランス語をマスターする上で大事なポイントです。
フランス語の動詞は活用がとても多いため、なるべくストレスが少なく、効率的に覚えていくのがよいでしょう。オススメは、以下のように動詞をグループ分けして順に学ぶ方法です。
- 頻出動詞の活用を覚える
- 第1群、第2群、第3群規則動詞の活用ルールを覚える
最初に頻出動詞の活用を覚えましょう。なぜなら、フランス語は頻出動詞ほど不規則に活用する例外パターンが多いからです。不規則に変化する動詞は数も多くないので、最初に覚えてしまったほうが楽です。
頻出動詞を覚えた後は、基本的な活用パターンの動詞になるため、ルールに則って効率的に覚えていけます。
また、活用を覚える際は、一気に全部を覚えるのではなく、時制ごとに段階的に覚えていくのがオススメです。
なぜなら、初心者のうちは使う時制も少なく、すべての活用を使うことはないからです。条件法や接続法などの活用は、必要になったタイミングで覚えれば問題ありません。
なお、学ぶ時制の範囲や順番は、仏検のレベルを参考にするとよいでしょう。仏検では、各級で出題する時制の範囲を公表しているので、それぞれのレベルで習得しておくべき時制が分かります。
一度に全部覚えようとすると挫折しがちなフランス語の活用も、段階的に行うことで効率よく進めることができます。
ポイント③:代名詞の種類と位置を覚える|口と手で覚える
代名詞もフランス語の文法では欠かせない存在で、マスターするのにオススメなのが、口と手を使って学ぶことです。
代名詞の基本知識を理解したら、代名詞を使ったフレーズを繰り返し口に出して読みます。実際に発音して、代名詞とその位置を身体(口)で覚えるのです。
代名詞を使いこなす1番のコツはとにかく慣れることで、正しい代名詞とその順番を身体で覚えれば、間違った語順には違和感を抱くので、ミスにも気づきやすくなります。
また、代名詞を使ったフレーズの書き取りもしましょう。例文のように、前後の主語や動詞によっては、代名詞は短縮形になり、表記が変わる場合があります。
例:
【私はマリーにそれをあげます】
Je le donne à Marie.
↓
【私はマリーにそれをあげました】
Je l’ai donné à Marie.(※)
(※)複合過去になると、助動詞avoir(ここではai)と代名詞「le」がくっつき、「l’ai」という表記になる
正しい表記を書けないと、ライティング試験では減点対象になることもあるため注意が必要です。
難しい代名詞だからこそ、頭よりも口と手を使って身体で覚えるようにすると、習得しやすく忘れにくいでしょう。
【関連記事】フランス語を学習できる初心者向けおすすめアプリ5選と勉強法を解説
フランス語の文法はフランス語講師のチェックがおすすめ!
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まとめ:フランス語初心者は文法の理解が習得への近道
この記事で紹介した、フランス語が難しいとされる5つの理由をおさらいしましょう。
- 理由①:男性名詞・女性名詞がある
- 理由②:動詞の種類・活用パターンが多い
- 理由③:代名詞の種類が多い
- 理由④:語順が複雑で覚えづらい
- 理由⑤:馴染みのない語彙が多い
また、英語学習経験のある日本人にとっては、フランス語文法がわかりやすいと言われる理由を3つ紹介しました。
- 理由①:アルファベットが英語と同じ
- 理由②:基本の語順が英語と同じ
- 理由③:英語にもある冠詞が存在
最後に、フランス語文法の学習ポイントとオススメの勉強法を3つ紹介しています。
- ポイント①:名詞の性を覚える|口に出して覚える
- ポイント②:動詞の活用変化を覚える|レベルで分けて学習
- ポイント③:代名詞の種類と位置を覚える|口と手で覚える
フランス語の文法はルールも多く、初心者にとってハードルが高いかもしれません。しかし、最初に基礎文法をしっかりと学べば、その後のフランス語習得のスピードはグッと上がります。
本記事で紹介した内容を参考に、日々コツコツと積み重ねてフランス語を身につけていきましょう。
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