イスラム圏で使用されることが多い、アラビア語。一見すると複雑な形をしており、「習得するのは難しそう」と感じる方も多いでしょう。

そこで今回は、アラビア語圏への留学経験がある筆者の経験を基にアラビア語で使われる文字の読み方や特徴を一覧表で紹介します。アラビア語を覚えるときにぜひ参考にしたい、アルファベットの歌も必見です。

この記事を読めば、アラビア語における基本的な文字のルールがわかります。「思っていたよりも、難しくないかも!」と前向きにアラビア語を学ぶきっかけにもなるでしょう。アラビア語に興味がある方や、いち早く習得したい方はぜひ参考にしてみてください。

アラビア語一覧|文字

アラビア語で使われる基本的な文字(アルファベット)は、全部で28文字です。アリフ以外はすべて子音であり、後ほど紹介する母音記号と組み合わせて使用されます。

アラビア語の文字で特徴的なのは、単語の中で登場する位置によって文字の形が変わる点です。具体的には、4つの種類があります。

  • 独立形
  • 語頭形
  • 語中形
  • 語末形

まずは、アラビア語の文字一覧表でチェックしていきましょう。なお、アラビア語の文字は日本語と異なり、右から左へ読んでいきます(例外:数字は左から右へ読む)。

そのため、一覧表も左端に語末形が並ぶように配置している点に留意してください。

読み
語末 語中 語頭 独立
ـا ـا ا ا アリフ
ـب ـبـ بـ ب バー
ـت ـتـ تـ ت ター
ـث ـثـ ثـ ث サー
ـج ـجـ جـ ج ジーム
ــح ـحـ حـ ح ハー(ha)
ـخ ـخـ خـ خ ハー(xa)
ـد ـد د د ダール
ـذ ـذ ذ ذ ザール
ـر ـر ر ر ラー
ـز ـز ز ز ザーイ
ـس ـسـ سـ س スィーン
ـش ـشـ شـ ش シーン
ـص ـصـ صـ ص サード
ـض ـضـ ضـ ض ダード
ـط ـطـ طـ ط ター
ـظ ـظـ ظـ ظ ザー
ـع ـعـ عـ ع アイン
ـغ ـغـ غـ غ ガイン
ـف ـفـ فـ ف ファー
ـق ـقـ قـ ق カーフ(qaf)
ـك ـكـ كـ ك カーフ(kaf)
ـل ـلـ لـ ل ラーム
ـم ـمـ مـ م ミーム
ـن ـنـ نـ ن ヌーン
ـه ـهـ هـ ه ハー(ha)
ـو ـو و و ワーウ
ـي ـيـ يـ ي ヤー

また、アラビア語には基本的なアルファベットのほか、特別な使い方をする文字2つあります。それが語末に使う「ター・マルブータ」と、声門閉鎖音「ハムザ」です。

ター・マルブータ名詞の語末にのみ登場する文字であり、直前の母音に合わせて「-at」などと発音されます。しかし、文末などの休止部分では「-a」など「t」の部分が発音されません。

一方、声門閉鎖音とは咳のように、閉じた声門から急激に声を発するときに出る子音です。

ハムザは声門閉鎖音を常に発音する「切るハムザ」、文頭以外では声門閉鎖音と続く母音が発音されない「結ぶハムザ」の2種類があります。単独で記載される場合もあれば、アリフやワーウなどの上に記載されることも。

ター・マルブータ、ハムザの形はそれぞれ次のとおりです。

読み
語末 語中 語頭 独立
ـة ـ ـ ة ター・マルブータ

ـأ ـئ

ـؤ ء

ـأ ـئـ

ـؤ ء

أ إ ء ハムザ

アラビア語一覧|母音記号

アラビア語の基本的な28文字のうち、27文字は子音であることがわかりました。単語の中で使うときには、母音を組み合わせることが必要です。

アラビア語では、記号を用いて母音を表します。母音記号は、次の3つです。

  • 短母音
  • 長母音
  • 2重母音

母音は必要に応じて記載するものであり、必須というわけではありません。しかし、母音記号を学んでおくと、アラビア語に対する理解がより一層深まります。

ここでは、3つの母音記号について見ていきましょう。

母音記号①:短母音

アラビア語の短母音3つあります。例外として、母音を発音せず子音のみを弱く発音する「スクーン」という母音記号もあります。

それぞれの記号名や配置する位置は、一覧表のとおりです。

短母音 母音記号 位置
ファトハ َ 文字の上
カスラ ِ 文字の下
ダンマ ُ 文字の上
無母音 スクーン ْ 文字の上

たとえば、アルファベット2番目の「バー(ب)」に短母音をつけると次のように変化します。

アラビア語 母音 

母音記号②:長母音

アラビア語長母音も短母音と同様に3つです。短母音の記号に加え「アリフ」や「ヤー」「ワーウ」が使用されます。

長母音 母音記号
アー アリフ+ファトハ  َ ا
イー ヤー+カスラ ِ ي
ウー ワーウ+ダンマ ُ و

たとえば、「バー(ب)」に長母音をつけた場合の表記は、次のとおりです。

アラビア語 長母音

母音記号③:2重母音

母音が2つ続く2重母音は、アラビア語で2つしかありません。

2重母音 母音記号
アィ ヤー+ファトハ  َ ا
アゥ ワーウ+ファトハ  َ ي

たとえば、「バー(ب)」に2重母音をつけると、次のようになります。

アラビア語 二重母音

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アラビア語一覧|形

アラビア語の文字は、単語の中で登場する位置によって文字の形が変わると紹介しました。具体的には、次の4種類に変化します。

  • 独立形
  • 語頭形
  • 語中形
  • 語末形

ここではアラビア語における文字の形について、単語の例とともに見ていきましょう。

形①:独立形

独立形は、アラビア語で最初に覚える基本の形です。独立して書く場合に使いますが、次に紹介する語末形と似ている文字が多い傾向にあります。

【腕】ذ:ザールを使った単語
ذِرَاعٌ(ディーラオン)

【頭】 ر:ラーを使った単語
رَأْسٌ(ラッソン)

【オリーブ】ز:ザーイを使った単語
زَيْتُونٌ(ゼイテゥーヌン)

形②:語末形

語末形は、単語の最後に位置するときに使う形です。前(右)の文字とつながる分、語頭形よりも右端が長かったり、1本の線(連結線)が伸びていたりする特徴があります。

【アジア】ا:アリフを使った単語
آسِيَا(アーシア)

【女の子】ب:バーを使った単語
بِنْتٌ(ビントン)

【犬】ت:ターを使った単語
كَلْبٌ(カンボン)

形③:語中形

語中形は、単語の途中に位置するときに使う形です。前後(右左)の文字とつながるため、語頭形の左右を伸ばしている文字が多い傾向にあります。

【ドア】ا:アリフを使った単語
بَابٌ(バーボン)

【パン】ب:バーを使った単語
خُبْزٌ(クォブゾン)

【美術館】ت:ターを使った単語
مَتْحَفٌ(マッハフォン)

形④:語頭形

語頭形は、単語のはじめに位置するときに使う形です。基本的には、後ろ(左)の文字とつながります。

【うさぎ】ا:アリフを使った単語
أَرْنَبٌ(アルマボン)

【家】ب:バーを使った単語
بَيْتٌ(ベイトン)

【りんご】ت:ターを使った単語
تُفَّاحَةٌ(トッファハトン)

ただし、次に挙げる6つの文字語頭・語中ともに後ろの文字とつながりませんつながることで、他の文字と見分けがつかなくなってしまうからです。

読み
語末 語中 語頭 独立
ـا ـا ا ا アリフ
ـد ـد د د ダール
ـذ ـذ ذ ذ ザール
ـر ـر ر ر ラー
ـز ـز ز ز ザーイ
ـو ـو و و ワーウ

以上の文字が単語内で出てきた場合、後ろに続く文字は語頭形を使う点にも注意しましょう。

アラビア語一覧|補助記号

アラビア語は母音記号のほか、タンウィーンシャッダといった補助記号が使われます。補助記号の意味や使い方について、それぞれ見ていきましょう。

補助記号①:タンウィーン

タンウィーンは、名詞形容詞格を表す補助記号です。ここで言う格とは、主格(~は)所有格(~の)などを指します。

タンウィーンとして使う記号は、一覧表のとおりです。

タンウィーン 位置
アン(対格) ファトハタン ًَ 文字の上
イン(所有格) カスラタン ٍِ 文字の下
ウン(主格) ダンマタン ٌُ 文字の上

通常、アン(対格)の語末にはアリフを添えます。ただし、例外としてター・マルブータの語末には加えません。

たとえば、「バー(ب)」にタンウィーンをつけると、次のようになります。

アラビア語 タンウィーン

補助記号②:シャッダ

シャッダとは、同じ子音を2連続で使っていることを示す補助記号です。基本的には文字の上につけますが、カスラやカスラタンの場合は母音・補助記号の上につけます。

例えば、「バー(ب)」にシャッダをつけた場合の表記は、一覧表のとおりです。

アラビア語 シャッダ

アラビア語一覧|アルファベットの歌

アラビア語の単語や文章を見ると、文字同士がつながっていて「よくわからない」という方も多いでしょう。しかし、アルファベットとして分解すると、難しい文字は意外と多くありません。

とはいえ、母国語とまったく違う言語を覚えるのは労力がかかるものです。そこで活用したいのが、アルファベットの歌。英語を覚えるとき、何度も歌ったことがある方も多いのではないでしょうか。

アラビア語にも、次のようなアルファベットの歌があります。

アラビア語初心者は、歌いながら少しずつアルファベットを覚えていきましょう。

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まとめ

アラビア語は一見すると、読み書きが難しい言語に見えます。しかし、アラビア語の特徴は次に挙げるように、意外とシンプルです。

ポイント①:基本的なアラビア文字は全部で28文字
ポイント②:母音記号や補助記号を使って単語を表現する
ポイント③:アルファベットの歌で簡単に学べる

「この文字についてもっと詳しく知りたい」という方は、当講座に在籍のネイティブアラビア語講師に聞いてみてください。

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